第2章 第4話 身に着ける、ウェアラブルコンピュータ

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CS-2章 ハードウェアを理解しよう

【CS02-04】第2章 第4話 身に着ける、ウェアラブルコンピュータ

最近ではコンピュータに搭載されている「チップ」、いわゆるコンピュータが計算するための部品がどんどん小型化され、それに伴い基板やその他の部品まで小型なものが登場し、それらを組み合わせたコンピュータは身につけられるほど小さくなりました。これにより、今までは机の上に置いてあったコンピュータや、ポケットに入れていたスマートフォンとは違った用途を助けるようになってきました。

今回はこの身に着けるコンピュータ、「ウェアラブルコンピュータ」について知識を広めます。

ウェアラブルコンピュータと言えば時計!

身に着けるコンピュータの最有力候補は腕時計です。老若男女問わずにだれでも元々身に着けていたものにコンピュータを搭載するのはとても合理的です。時計は時間を確認するという事でも良く見るものですし、そこに様々な情報が集約されていればとても便利です。

この考えは1980年ごろから始まって、カシオ計算機からDATA BANKと呼ばれる電卓や電話帳の機能を搭載した腕時計が発売されました。セイコーからはBASICプログラミングが可能な4ビットのCPUを搭載した「腕コン」と呼ばれるスマートウォッチが発売されたりしていました。まだインターネットが普及していない時代で、できることも少ないスマートウォッチだったため、一般にはあまり浸透しませんでした。

2010年ごろから前回の話題の中心だったスマートフォンが登場します。これによりスマートウォッチの開発も進むようになりました。いくらチップが小さくなり、コンピュータが小型化されたとは言え、腕時計の大きさでは人々のニーズを満たすには不十分ですが、スマートフォンと通信し、コンピュータの処理の多くをスマートフォンに任せてスマートフォンの内容を表示したり、データはスマートフォン側であずかるようにすれば多くの事を腕時計のサイズで実現できます。

例えばEメールやインターネット上の情報、動画や写真などをスマートフォンから呼び出して腕時計上で表示させることで、スマートフォンをカバンやポケットに入れておいたまま様々な操作が可能です。

Fabshop Wearable

Apple Watchで一般にも。

ハードウェアの話の中でよく出てくるAppleですが、ここでも登場です。iOSを搭載したApple Watchが登場しました。iPhoneユーザーだけでなく一部機能は制限されるもののAndroidユーザーでも利用可能なスマートウォッチです。スマートフォン同様にメッセージを受信したり、インターネットと接続したり、電話もできるようになっています。バッテリが1日程度しかもたないため、そもそもの時計としてどうなのかという声もありましたが、それをカバーするほどのデザインとiPhoneの普及によりAppleというブランドの人気も高まっていたことから多くの人たちに支持されるようになりました。

健康管理も人気の1つ

Apple Watchは多くの人に支持されるようになり、スマートウォッチが一般にも広く普及するようになりました。いよいよウェアラブルコンピューティングの幕開けとも言ってよいでしょう。Apple Watchが人気を集めているのはデザイン性だけでなくその機能面にも言えることです。

常に身に着けていることで人間の健康状態を管理できるようにもなりました。心拍数の異常変化や人の転倒などを検知して通知したり、睡眠の状態を感知した李、ジョギングや運動の記録をとったりと様々な用途に使われるようになりました。

特に健康管理では心拍数の変化を通知して、多くの人の命を救えるようになりました。Appleのサイトではその実話や助かった人たちのインタビューを見ることができます。(詳細はこちらから)

Apple Watch Series 4(GPSモデル)- 40mmスペースグレイアルミニウムケースとブラックスポーツバンド

世界を驚かせたGoogle Glass. 眼鏡にコンピュータとモニタを搭載

身に着けているものに搭載された事例としてもう1つ、Google Glassがあります。いわゆる「眼鏡」にコンピュータを搭載した、まさにSFに出てきそうなコンピュータです。以下の写真のように右側の目の上に小さな映像表示用のモニタが搭載されていて、実際に見てみると目の前少し右上の方向に17インチ程度のモニタが常に浮いて表示されているような感じです。

Google GlassはGoogleアカウントと紐づいてインターネットに接続して様々な事が可能です。操作は音声認識と右側についた小さなタッチスペースをタッチしたりスライドすることで画面の切り替えができます。

画面上には、メールが届けば通知と文章などが表示され、動画などは骨伝導で聞くことができます。カメラも搭載されているため写真撮影、ビデオ撮影も音声で開始でき、そのままクラウドに保存されます。(※クラウドとはインターネット上の事で、今後の章で詳しく触れていきます。)

ナビゲーションではGoogle Mapによるナビが利用でき、常にマップが目前に浮いているように表示されます。

翻訳なども優れていて、見ている看板などをリアルタイムで画像処理して看板すら翻訳してしまいます。(現在この機能はGoogle翻訳アプリに搭載されています。)スマートフォンと連携しているため、もちろん電話に出たりすることもできます。

当初眼鏡のフレームだけでレンズがない状態で発売されていました。このウェアラブルコンピュータについては残念ながら正規リリースはまだされておらず、2013年に早期導入プログラムとして米国だけで発売されていました。このプログラムは2015年には終了していて、現在では法人向けにのみ販売されています。

今後一般消費者向けへの販売をいったん中止にした背景として簡単に写真や動画の撮影が可能で、取っている様子もわからないなどからプライバシーの問題なども指摘されていて、運転中の利用なども非常に危険であるなど、未解決の問題が多くあるところにあります。

Fabshop google glass

上と下の写真が早期販売プログラムで発売されたGoogle Glass。

Fabshop google glass

下の写真は現在販売されている法人向けのもの

ウェアラブルコンピュータでユビキタスコンピューティング

ユビキタスコンピューティング(ubiquitous computing)とは少し前には良く言われていた言葉で21世紀のコンピューティングという言われ方をしていました。今はあまり使われなくなってきた言葉です。

意味はかなり抽象的で「どこにでもコンピュータがあって、人がコンピュータを意識せずにつかっているようなコンピューティング」という事になります。

これはコンピュータを身に着けるようになった今、まさにやってきているといえます。先に紹介したApple Watchなどを「コンピュータだ」と意識して使っている人は少なくなってきているはずです。

Google Glassなども、今まで人が身に着けていたものにコンピュータが搭載されることで、常にコンピュータと共に歩いていることになります。やがて、ジャケットやスカート、シューズなどにコンピュータが搭載されることで、元々持っていた機能がどんどん拡張されていきます。さらに「人」の状態を管理することもできるようになります。先のApple Watchが人の健康や運動状況を管理してくれるようになったわけです。様々なセンサーが搭載されていることで人の動きや体の状況をデータにして通信するようになります。

トレーニングしている選手の状況やその変化なども追跡することができ、病気になるまでの様子なども記録されそれらデータが管理者や主治医の元に自動で届けられる日も遠くありません。